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「オフィスオートメーション」という言葉を最初に聞いたのは、いつだったろうか。筆者の記憶では25年以上も前のことだ。いま改めてこの言葉について考えてみると、「オフィスワークの中には、技術によって、人の手を離れて自動化できることがたくさんある」と考えられていたのだろう。長らくオフィスワークの主要な部分を占めてきた「情報処理」と「コミュニケーション」のうち、前者が飛躍的に効率化されるというイメージではなかっただろうか。
協働作業に合うように空間の配分を見直す

実際のところ、近年の情報技術の進化によって、情報処理型の作業は大幅に効率化されてきている。そのことによって、定型的で分業型の個人作業は減ってきているはずだ。もっとも、この間に処理すべき情報量は格段に増えているので、この効率化を実感できにくい人もいるだろうが。
では、オフィスワークのもう一つの要素であるコミュニケーションについてはどうだろう。電子メールやウェブの普及とともに、企業組織内では誰もが直接つながるようになったし、多数に向けての同報発信も可能になった。その結果、多くの組織で、連絡伝達型の会議が減ったはずだ。あるいは、ネット上での議論や意見交換のおかげで、事前説明や調整の時間も減ったかもしれない。
その一方で、常に新しいアイデアが求められたり、複雑な意思決定を迫られたりした結果、チームの力を頼りにする小規模な打合せや会議が増えていそうだ。最近、「自席にいる時間が減って、会議室で過ごす時間が増えた」とか「会議室の予約がいっぱいで、打合せ場所が足りない」と感じている人は少なくないはずだ。
今後、オフィスワーカーの仕事はさらに専門的で高度な頭脳労働へと移っていき、それに伴ってグループワークも増えていくだろう。もちろん、一人で考える「ソロワーク」も増えるかもしれないが、ITを利用してオフィス以外の場所で働く「テレワーク」によって、分散も可能である。その結果として、オフィス内に残る仕事は、創造的な協働作業が中心になることが考えられる。


創造的な協働作業が中心になれば、オフィス空間の構成も変わっていい。個人用デスクの利用率が下がって、ミーティングスペースや会議室、プロジェクトルームで過ごす時間が長くなるのに合わせて、空間の機能や面積の配分を見直すことは理にかなっている。以下では、そんな改革を一足先に実行したヨーロッパの事例をみてみよう。
最小限の個人席に豊富なコミュニケーション空間、BBCのメディア・センター
BBC(英国放送協会)が不動産分野で進めている改革プロジェクト「2020 Property Vision」の下でつくられた新本社オフィスの一つ「メディア・センター」。ここで1200人が働いている。移転前は個室中心のオフィスだったが、移転後は明るいオープンオフィスとなった。人々の出会いや交流を誘って、コミュニケーションを支える空間になっている。
6階建てで、延べ床面積が3万9000m2のメディア・センターには、明るい光を採り入れる3つのアトリウムがある。真上から見た形はちょうど漢字の「目」のようだ。上下階が見渡せる吹き抜けの周りには、やや密度の高いデスクスペースと、多様なタイプの広めなパブリックスペースが配置されている。
正確な数値は分からないが、それらの面積比はほぼ同じくらいに見える。デスクのレイアウトはいわゆる「対向島型」と呼べるもので、ひとり分のデスクはさほど大きくない。そのすぐそばには、色々なタイプのオープンラウンジや会議室が見える。
インテリアには、白い壁とダークグレーの床をベースに、椅子やデスクトップパネルに用いたカラフルな素材と木質系の建具などをバランス良く配し、会議室を仕切るガラスにダイナミックで遊び心のあるグラフィックが描かれているなど、ナチュラルで品良く、それでいて活気のある仕上がりとなっている。人々がどこで何をしていても、常にお互いにその気配を感じることのできる「ほどよい集まり方」を支えてくれそうな雰囲気の空間である。
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